【循環器総論-8】心電図の原理

循環器総論

循環器総論―検査

次は循環器系でよく行われる検査について簡単に説明します。

以下の6つの検査が一般的によく使用します。

  1. 心電図
  2. 胸部レントゲン
  3. 採血、BNPとトロポニンの意味
  4. 経胸壁心エコー検査
  5. 冠動脈CT検査
  6. 心臓カテーテル検査

まずは循環器を受診したらほぼ確実に実施する心電図について説明します。

1. 心電図

心電図とは電気生理学的検査の一種であり、心臓の電気的活動体表面から測定し、グラフの形にしたものです。

心電図のすごいところは体表面から心臓の動きが観察できることです。

普段は心臓は体の中の臓器であるため動きを見るためには胸骨を切開して直接見なければなりません。

しかし、心電図や心エコーなどは疼痛もなく、簡易的に心臓の動きや形を見ることができる検査です。

刺激伝導系の特殊心筋細胞自発的・定期的に脱分極心房から心筋へ電気を流しています。

心筋では内側から外側に向かって電気が流れています。

http://citec.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=25694

もともとは1903年にオランダのWillem Einthovenの検流計で測定されたことが始まりです。

100年以上前にからある検査なんですね。第一次世界大戦より前からあるってなんか不思議な感じがしますね。

検流計の図は医療従事者なら一度はどこかで見たことがあるかもしれないですね。

有名な、両手、左足を水につけて、右足を地面に付けている図です!

前川孫二郎, 臨床電気心働図講座,日本循環器病学, 1, p.149 (1935)

一口に心電図といってもいろんな種類の心電図があります。

  • ●安静時心電図
  • ●負荷心電図
  • ●ホルター心電図
  • ●植え込み型心電図
  • ●簡易的3点心電図
  • ●胎児心電図 など

また、どこに電極をつけるかによっても種類があります。

  • ●12誘導心電図
  • ●食道内心電図
  • ●心室内心電図 など

臨床的に最も頻回に使用している12誘導心電図を説明します。

普段「心電図検査」をいっているのは12誘導心電図のことです。

12誘導心電図とは

みなさんも一度は受けたことあるかと思いますが、前胸部につける電極両手両足につける電極があります。

https://informa.medilink-study.com/web-informa/post20461.html/

なぜ、二種類の誘導電極をつけるかというと、心臓はおおまかに3次元の楕円形の形をしているため、その動きを2次元の紙に表すためには2方向の動きを捉える必要があるからです。

  • 肢誘導両手両足に電極をつけて、体の環状面の電気活動を測定します。
  • 胸部誘導前胸部に6個の電極をつけて、体の横断面の電気活動を測定します。
https://informa.medilink-study.com/wordpress/wp-content/uploads/2019/03/yassi_vol5_fig1.jpg
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%A2%E7%8A%B6%E9%9D%A2

肢誘導

 両手両足に電極をつけて、それぞれの電位差を測定します。右足の電極をアースと言って電位0地点(不関電極)を表しています。

そのため、右足以外のそれぞれの電極には電位があり、右手<左手<左足の順で電位は高くなります。

電気は電位の低いところから高いところに流れます。

つまり、電気は右手から左手へ(I誘導)、右手から左足へ(II誘導)、左手から左足へ(III誘導)流れ、I―III誘導を双極誘導といいます。

  • I誘導右手から左手へ電流が流れる
  • II誘導右手から左足へ電流が流れる
  • III誘導左手から左足へ電流が流れる

また、右足が電位0であるので、右足から右手へ(aVR誘導)、右足から左手へ(aVL誘導)、右足から左足へ(aVF誘導)電気が流れ、それぞれの誘導を単極誘導と言います。

  • aVR誘導右足から右手へ電流が流れる
  • aVL誘導右足から左手へ電流が流れる
  • aVF誘導右足から左足へ電流が流れる
  • 双極誘導両端の電位が0ではない誘導I―III誘導
  • 単極誘導片方が電位0の誘導aVR―aVF誘導
病気が見えるVol2 p28

双極誘導のI―III誘導を繋ぎ、中心を不関電極(電位0)とすると綺麗な三角形になります。

これを「Einthovenの三角形」といいます。

病気が見えるVol2 p28

次は胸部誘導について見ていきます。

胸部誘導

 前胸部から左側胸部にかけて6つの誘導(V1−6)を装着し、体の横断面の電気活動を測定します。

Vは右房電位を、Vは左室電位をよく表しています。

病気が見えるVol2 p29

電極に向かってくる向きの電位心電図の上向に書きます。

装着部位は決められていて、

  • V1誘導(赤)が第4肋間胸骨右縁
  • ●V2誘導(黄)が第4肋間胸骨左縁
  • ●V3誘導(緑)がV2とV4の中間地点
  • ●V4誘導(茶)が第5肋間鎖骨中線上
  • ●V5誘導(黒)が第5肋間前腋窩線上
  • ●V6誘導(紫)が第5肋間中腋窩線上

実際臨床では場所と色を覚えなければいけません。

いろいろな覚え方がありますが、「ア(赤)キ(黄)ミ(緑)ちゃん(茶)国(黒)試(紫)」という語呂合わせはよく見られます。

病気が見えるVol2 p29

特殊な疾患を判別するときは、左右逆に電極を装着したり、全体的に1肋間上に装着することもあります。

  • 左右逆に誘導を装着場合肺梗塞や右心梗塞を強く疑うときなど、右心負荷が強く疑われる病態では左右逆に電極を装着した方がより、心電図異常が現れやすいと言われます。
  • 全体的に1肋間上に装着場合Brugada症候群を疑った場合は1肋間あるいは2肋間あげて測定し同様の心電図異常がでているか確認することが診断の補佐となります。
  • Brugada症候群アジア人の成人男性に多く無症状であるが致死性の不整脈に移行し突然死の原因となることがあります。安静時の心電図異常にはV1−3に特徴的なcoved型(Type 1)saddle back型(Type 2)があります。

詳細は各論で説明します

まとめ

心電図とは電気生理学的検査の一種であり、心臓の電気的活動体表面から測定し、グラフの形にしたものです。

12誘導心電図には胸部誘導肢誘導があります。

これで今日の内容は終わります。お疲れ様です。

次回は心電図の読み方を説明します。

Image by Couleur from Pixabay

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