循環器総論―静脈とは
今回は静脈に関して説明します。
- 静脈とは
- 分類
- 血管の基本構造
- 静脈還流の機序
- リンパ液とは
- 生理学的機能
- 下腿浮腫の原因疾患
静脈とは
動脈が心臓から組織に血液を送る血管であるのに対して、静脈は組織から心臓に送る血管です。
動脈血には組織に必要な酸素や栄養が含まれていますが、静脈血には組織に不要な老廃物が含まれています。
動脈と静脈は毛細血管を介して繋がっています。
実際は毛細血管で物質のやりとりを行なっています。
分類
全身の静脈は肺静脈系と大静脈系に分られます。
- 肺静脈系―肺静脈は肺から心臓に血液を送る血管です。肺で酸素化された血液が通るため酸素が多く含まれています。
- 大静脈系―肺以外の組織からの血液が心臓に戻る血管です。心臓より上の組織から戻る血液が通る血管を上大静脈、心臓よりしたの組織から戻る血液が通る血管を下大静脈といいます。腸から肝臓までの血液が通る門脈系も含みます。
血管の基本構造
静脈は動脈と同様に内膜・中膜・外膜の3層構造になっています。
動脈と異なり、静脈にかかる圧力は少ないため、動脈と比べて内膜・中膜が薄く、外膜が最も厚いです。
また、足や手などは重力の影響を受けるため血液が逆流しない様に逆流防止のため静脈弁がついています。
この静脈弁の不全で起こる疾患が下肢静脈瘤です。
静脈弁閉鎖機能不全に至ると、血液が逆流し、静脈の断面積が拡大して行きます。これを拡張性蛇行静脈と呼び、静脈瘤に特徴的です。
静脈還流の機序
静脈血流は重力に逆らって心臓に血液を流しています。
ではどうやって重力に逆らって血液を送っているのでしょうか。
先ほど説明した静脈弁も構造的に必要になってきます。
それ以外に、肺静脈以外の静脈は三種類の圧力を受けます。
- 心収縮―動脈ほどではないですが静脈も心収縮による圧力があります。
- 骨格筋ポンプー足の筋肉が収縮することによって静脈が圧縮され静脈弁のため一方弁となります。
- 呼吸ポンプー呼吸の際、横隔膜の移動により胸腔内が陰圧となり足の血流が戻りやすくなります。
リンパ液とは
毛細血管で物質のやりとりを行なっていますが、細動脈から栄養や酸素を含んだ血漿(血球成分を含まない液体成分)が染み出し細胞の間を満たします。これを間質液・細胞間液と呼び、細静脈に90%は吸収されます。
残りの10%がリンパ管に吸収され、リンパ液を呼ばれます。
生理学的機能
静脈は心臓へ血液を送る血管だけでなく、下記の役割もあります。
- 放熱器官
- 血液貯留
✔︎放熱器官としての役割
熱い時は、熱を放散させる様に手足の末梢まで血液を行き渡るようにして、静脈血流を増加させてできるだけ心臓に戻ってくるまで時間がかかる様にします。
寒い時は逆に末梢血管に血流行かない様にして体温の低下を防ぎます。
✔︎血液貯留としての役割
静脈は容量血管ともいい、動脈と異なり、血管径を増加させることで血液を貯留させることができます。
血液の約30%を動脈側に、約70%が静脈側に分配されています。
下腿浮腫の原因疾患
足の浮腫みは間質液が増加した状態です。
全身性浮腫と局所性浮腫があります。
全身性の浮腫としては、弁膜症や心機能低下などを伴ううっ血性心不全やネフローゼなどを伴う腎機能低下などがあります。また、肝硬変や甲状腺機能低下などは鑑別すべき疾患です。
腰痛などで鎮痛薬を処方されている方などや避妊薬などの薬剤性浮腫もあります。
局所性浮腫としては下肢静脈瘤や深部静脈血栓症などの静脈性浮腫やリンパ浮腫が多いです。脳梗塞後の麻痺側は筋ポンプ機能が低下しているため麻痺性浮腫が起こります。
その他として、炎症性疾患やアレルギー性疾患や外傷や特発性や健常人に起こる浮腫や慢性静脈不全症などもあります。
今日はこれで終わります。お疲れ様です。
次回は静脈性浮腫について説明します。
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