循環器総論―検査
- 心電図
- 胸部レントゲン
- 採血、BNPとトロポニンの意味
- 経胸壁心エコー検査
- 冠動脈CT検査
- 心臓カテーテル検査
今回は左心カテーテルについて説明します。
- ●右心カテーテル検査ー静脈から穿刺し、主に血行動態評価のため行われ、全身状態の評価に使用されることが多いです。
- ●左心カテーテル検査―動脈から穿刺し、主に心血管造影のため行われ、冠動脈の評価と左室形態・弁膜症評価に使用されることが多いです。
左心カテーテル検査
心臓カテーテル検査とは橈骨動脈や大腿動脈から穿刺して、カテーテルと呼ばれる細い管を冠動脈の入口部まで挿入します。冠動脈内に選択的に造影剤を急速注入し、X線で連続撮影しすることで造影剤の流れ、心臓の動きを動画として観察し、冠動脈•心腔内の形態を評価します。
心臓カテーテル検査といえば左心カテーテル検査を意味することが多いです。
評価できること
- 冠動脈の形態
- 冠動脈の攣縮誘発
- 左室の形態
- 大血管の形態
- 大動脈弁・僧帽弁の逆流の程度
- 左室内圧
- 大動脈圧
- 心筋生検 など
直接冠動脈の狭窄部位や狭窄度を評価できるため狭心症や心筋梗塞の確定診断ができます。
撮影方法
X線造影装置のことをCアームと言います。
基本的に左右冠状動脈を4方向から撮影します。
右下、右上、左下、左上の4方向から撮影します。
左右方向
- 右―第一斜位、右前斜位(right anterior oblique view:RAO)
- 左―第二斜位、左前斜位(left anterior oblique view:LAO)
上下方向
- 上側(頭側)―cranial(クラニアル)
- 下側(足側)―caudal(カウダール)
そのため、撮影四箇所はそれぞれ以下のように呼びます。
- ●右下―RAO cranial
- ●右上―RAO caudal
- ●左下―LAO cranial(エルクラ)
- ●左上―LAO caudal(スパイダーview)
冠動脈の部位
冠動脈は右から右冠状動脈、左から左冠状動脈本幹が分枝し、左冠状動脈はすぐに左回旋枝と左前下行枝に分枝します。
- 右冠状動脈(Right coronary artery:RCA)
- 左冠状動脈(Left coronary artery:LCA)
- 左前下行枝(Left anterior descending artery:LAD)
- 左回旋枝(left circumflex artery:LCx)
冠動脈は部位によって番号がついています。
- ●右冠状動脈(Right coronary artery:RCA)―#1-#4
- ●左冠状動脈(Left coronary artery:LCA)―#5
- ●左前下行枝(Left anterior descending artery:LAD)― #6-#10
- ●左回旋枝(left circumflex artery:LCx )―#11-#15
これによってより詳しく冠動脈の部位を表現することができます。
冠動脈の支配領域
- ●LAD―左室前壁、心室中隔前部
- ●LCX―左室側壁、後壁
- ●RCA―左室下壁、心室中隔、後部、右室
左室が収縮することで体循環に血液を送るため左室収縮力は非常に大切になってきます。
そのため、左冠状動脈(LCX)の支配領域は重要になってきます。
その中でも左室の半分以上の支配領域がある左前下行枝は最も大切です。
心筋梗塞などで手術となる場合はカテーテル治療の場合は責任病変から治療します。
外科的治療の場合は左前下行枝は絶対に形成します。それ以外の狭窄に対してはcase by caseです。
撮影
冠動脈を造影することを「冠動脈造影検査(Coronary angiography: CAG)」と言います
左右両方同時に撮影することは基本的にはやらないのでどちらかから撮影します。
誘発試験
冠動脈が狭窄することを「狭心症」といいます。
一般的には動脈硬化などで物理的に狭くなっている状態が多いです。
その他に冠動脈が攣縮(れんしゅく)することで一時的に狭窄し、同様の症状が出ることがあります。
これを冠攣縮性狭心症といいます。
冠攣縮性狭心症の場合は単純に左心カテーテル検査で冠動脈造影をしても狭窄部位はありません。
そのため、冠攣縮を誘発させる薬剤(エルゴメトリン)を投与しテストします。
※ニトロペンー冠動脈を拡張させる薬剤
左室造影
ピッグカテーテルという豚の尻尾のように先端が丸まったカテーテルを左室内に挿入し造影します。
左室形態と左室の動きが分かります。
下図は正常です。
心尖部の収縮が局所的に悪くなり、「たこつぼ」に似ているためたこつぼ型心筋症と呼ばれます。
また、僧帽弁閉鎖不全症がある時には左房への逆流があるため重症度が診断できます。
Sellers分類
- I度―左房へジェットを認めるが、左房全体に及ばない
- II度―左房全体は造影されるが、左室より淡い
- III度―左房の拡大を認める。左房と左室が同濃度
- IV度―左房の拡大を認める。左房が左室や大動脈より濃い
左室内で造影すれば僧帽弁評価ができます。
大動脈弁評価のためには大動脈で造影します。
心筋生検
心筋症の確定診断のため左室心筋あるいは右室心筋をカテーテル先端部で摘んで採取することを心筋生検(biopsy、バイオプシー)と言います。
採取時に痛みはありませんが、心筋の薄い部位を採取して心臓に穴があいたり(穿孔)、カテーテルで心筋を貫いてしまう(穿通)こともあります。
採取した心筋は病理学的検査を行い、心筋症、サイコイドーシス、アミロイドーシスなどの診断をします。
まとめ
1 撮影方法
- ●右下―RAO cranial
- ●右上―RAO caudal
- ●左下―LAO cranial(エルクラ)
- ●左上―LAO caudal(スパイダーview)
2 冠動脈の部位
- ●右冠状動脈(Right coronary artery:RCA)―#1-#4
- ●左冠状動脈(Left coronary artery:LCA)―#5
- ●左前下行枝(Left anterior descending artery:LAD)― #6-#10
- ●左回旋枝(left circumflex artery:LCx )―#11-#15
3 撮影 4方向から冠動脈の各部位を撮影
4 誘発試験 冠攣縮性狭心症の確定診断
5 左室造影 心筋症・閉鎖不全症の評価
6 心筋生検 心筋を採取し、病理学的検査で精査
今回はこれで終わります。お疲れ様です。
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