【循環器】
循環器総論―心臓の生理
前回は心臓の解剖、形を解説しました。
今回はどのように動いているかを解説します。
生理学は結構難しいので頑張ってください!
まずは今回の内容をまとめておきます
今回の内容
- それぞれの心腔の役割
- 心筋の成り立ち、刺激伝導系
- 心収縮とは
- 心周期とは
1. それぞれの心腔の役割
心臓はポンプのような役割を持っており、血液を全身に送ることが最大の役割です。
そのため、心臓がどのように動いているかは非常に大切になってきます。
心臓が正常に動かなければ全身の血液が行かなくなり、脳、腎臓、肝臓などの各臓器が正常に機能しなくなります。
心臓の解剖に血液の流れを示すと以下のようになります。
心臓は4つの腔に分かれていますが、さらに右心房と右心室からなる右心系と左心房と左心室からなる左心系に分かれます。
それぞれ役割が違います。
- ●右心系―右心房と右心室から構成されます。上大静脈、下大静脈通じて、全身からの血液が集まり、肺動脈を経て肺へ血液を送ります。
- ●左心系―左心房と左心室から構成されます。肺静脈を通じて、肺からの血液が集まり、大動脈を経て全身へ血液を送ります。
心腔内圧はそれぞれ以下のように成ります。数値は絶対的な範囲ではなく目安です。
心房は平均圧で測定され、心室は収縮期、拡張期それぞれを圧を示します。
- 右心房―平均圧5-8mmHg
- 右心室―収縮期圧15-30mmHg、拡張期圧2-8mmHg
- 左心房―平均圧2-12mmHg
- 左心室―収縮期圧100-140mmHg、拡張期圧2-12mmHg
左心系は全身に血液を送る必要があるため、右心系よりも高い圧力が必要になります。そのため、左心室の方が右心室より心筋が厚いです。
右心系の方が内圧が低く、「低圧系」と呼ばれています。逆に左心系は「高圧系」と呼ばれます。
- ●低圧系―右心房、右心室
- ●高圧系―左心房、左心室
心臓の収縮と拡張を繰り返し、その度に逆流防止弁である心臓弁は開放と閉鎖を繰り返します。
心内心電図や心腔内圧について詳細は「検査」の章で説明します。
2. 心筋の成り立ち、刺激伝導系
次に心筋について簡単に説明します。
心筋とは筋繊維のことです。筋繊維は心筋細胞の集まりであり、心筋細胞は筋原繊維の、そして筋原繊維は筋フィラメント(アクチンフィラメント、ミオシンフィラメント)の集合です。
- 筋繊維<心筋細胞<筋原繊維<筋フィラメント
- ●アクチンフィラメントーアクチン、トロポミオシン、トロポニン
- ●ミオシンフィラメントーミオシン分子
心臓の動きということは刺激伝導系が大切になってきます。
- 刺激伝導系:自ら活動電位を反復して発生させることができる特殊な筋繊維(特殊心筋細胞)からなる一連の通り道のことです。心房・心室の壁を構成する固有心筋とは区別されます。
ではなぜ心筋が電気が流れると心筋が収縮するのでしょうか。
まず、細胞は外界(細胞の外)と細胞膜で分けられています。
細胞はそれ自体生命活動しているため、必要な栄養あるいは不要物を細胞外に排泄する必要があります。
そのために、細胞膜には様々な種類のチャネルと呼ばれる穴が空いています。
チャネルは常に開いているものから、条件が揃った際にのみ開くあるいは閉じるものがあります。
膜電位とは
ではその条件とは何でしょうか
それは細胞膜の電位、すなわち膜電位と呼ばれるものです。
- 膜電位とはー細胞の内と外に存在する電位の差のことです。 すべての細胞は細胞の中と外とでイオンの組成が異なっており、この電荷を持つイオンの分布の差が、電位の差をもたらします。 通常、細胞内は細胞外に対して負(陰性)の電位にあります。
何もしなければ電位差を無くすように、イオンは動きますが、イオンポンプによって一方から他方へ、能動的に常に一方通行のイオン輸送を担っています。
イオンは常に細胞の中と外を移動しています。マイナスイオンであれば負の電荷、プラスイオンであれば正の電荷を持っています。
イオンの移動が定常状態に落ち着けば電荷の移動はなくなり、ある一定の状態で平衡が保たれます。
その状態のことを静止膜電位といいます。
- ●静止膜電位―見かけ上電荷の移動がなくなり、膜電位が定常状態となった状態
通常、細胞膜は-70mVで静止膜電位を保っています。この状態を分極と言います。
この状態からプラス方向に変化することを脱分極、マイナス方向に変化することを過分極、一度脱分極した後再度マイナス方向に変化すること再分極と言います。
- ●分極―-70mVで静止膜電位を保っている状態
- ●脱分極―-70mVから-20mVへ変化するなど、プラス方向に変化すること
- ●過分極―-70mVから-100mVへ変化するなど、マイナス方向に変化すること
- ●再分極―一度脱分極した後再度マイナス方向に変化すること
3. 心筋の収縮
興奮刺激による膜の局所的な脱分極によって、心筋細胞の表面の膜にある電位依存性チャネルが開きます。その結果濃度勾配および電気的勾配が推進力となり、細胞内へ流入します。
特に心筋ではCa2+が細胞内に流入することによって、トロポミオシンの立体構造が変化します。それにより、ミオシンとアクチンが接合し、ミオシン頭部が屈曲することにより、アクチンが収縮します。
細胞内Ca2+濃度が下がることでミオシン頭部がアクチンと解離し、収縮が終了し拡張します。
4. 心周期とは
心臓の収縮と拡張を周期的に繰り返すことを心周期と言います。
- ●心周期ー収縮期(心室が収縮している時期)と拡張期(心室が拡張している時期)を周期的に繰り返すこと
収縮期には右心室、左心室が収縮します。
そのため、右心室・左心室の中は圧力が高まり、三尖弁・僧帽弁は閉鎖し、肺動脈弁・大動脈弁は開放されます。
反対に、右心房・左心房は拡張しており、全身からの血液が右心房に、肺からの血液が左心房に流入しています。
拡張期には右心室、左心室が拡張することにより両心室内の圧力が急激に下がります。肺動脈弁、大動脈弁が閉鎖されます。
加えて右心房、左心房が軽度収縮するため、三尖弁・僧帽弁が解放され、両心室内に血液が充満します。
心周期で一番大切な左心室の心腔内圧と心腔内容量について説明します。
縦軸に左室内圧(mmHg)、横軸に左室容積(mL)を書くと圧容量曲線が書けます。
曲線で囲まれた面積が一回拍出量になり、左室内圧が低かったり、左室容積が小さければ一回拍出量は少なくなります。
次に縦軸に左心系内圧と横軸に時間をかくと以下の図が書けます。
青い部分は左室の拡張期で黄色い部分は左室の収縮期になります。
青い線が左室内圧であり、収縮期と拡張期で大きく変化します。
また、赤い点線が大動脈圧で普段の血圧はこの値を測定しています。
今回はこれで終わります。結構大変でしたね。
まとめ
1 それぞれの心腔の役割
- ●右心系―右心房と右心室から構成されます。上大静脈、下大静脈通じて、全身からの血液が集まり、肺動脈を経て肺へ血液を送ります。
- ●左心系―左心房と左心室から構成されます。肺静脈を通じて、肺からの血液が集まり、大動脈を経て全身へ血液を送ります。
2 心筋の成り立ち、刺激伝導系
心筋とは筋繊維のことです。筋繊維は心筋細胞の集まりであり、心筋細胞は筋原繊維の、そして筋原繊維は筋フィラメント(アクチンフィラメント、ミオシンフィラメント)の集合です。
- ●刺激伝導系:自ら活動電位を反復して発生させることができる特殊な筋繊維(特殊心筋細胞)からなる一連の通り道のことです。
3 心収縮とは
興奮刺激による膜の局所的な脱分極によって、イオンチャネルが開きます。流入したCaイオンにより筋フィラメントが結合し、ミオシン頭部が屈曲されアクチンフィラメントが収縮すること。
4 心周期とは
- ●心周期ー収縮期(心室が収縮している時期)と拡張期(心室が拡張している時期)を周期的に繰り返すこと
今回はこれで終わります。お疲れ様です。
次回は心拍出量について説明します。
Photo by Kristine Wook on Unsplash
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