循環器各論―大動脈疾患
大動脈疾患
- 大動脈瘤
- 大動脈解離
- 大動脈炎症候群
今回は胸部大動脈瘤の症状・検査に関して説明します。
- 大動脈とは
- 大動脈瘤とは
- 有病率
- リスク因子・原因
- 分類
- 有病率
- リスク因子
- 症状
- 検査
- 治療・手術適応
- 合併症
- 予後
胸部大動脈瘤
胸部大動脈瘤とは心臓から横隔膜より上の大動脈のことであり、大動脈壁の一部が全周性または、局所性に正常の径より1.5倍を超えて拡大した状態、あるいは突出した状態をを胸部大動脈瘤と言います。
正常胸部大動脈 <30mm 大動脈拡張症 <45mm 胸部大動脈瘤
- 大動脈基部拡張症―心臓から出てsino-tubular junction(STJ)まで
- 上行大動脈―STJから腕頭動脈まで
- 弓部大動脈―腕頭動脈から肺動脈の左右分岐部位まで
- 下行大動脈―肺動脈の左右分岐部位から横隔膜まで
また、横隔膜を跨ぐように大動脈瘤が存在する場合は胸腹部大動脈瘤といいます。
胸腹部大動脈瘤は腹部大動脈瘤と腹部主要分枝(腹腔動脈、左右腎動脈、上下腸間膜動脈)の位置関係でCrawford 分類 I-V型に分類されます。
- I型―左鎖骨下動脈より腎動脈まで及ぶ動脈瘤
- II型―左鎖骨下動脈より腎動脈末梢側に進展する動脈瘤
- III型―Th6レベルの下行大動脈より腎動脈末梢側に進展する動脈瘤
- IV型―腹部分枝動脈以下の腹部大動脈全体に及ぶ動脈瘤
- V型―Th6レベルの下行大動脈より腎動脈中枢に進展する動脈瘤
症状
大動脈瘤の多くは症状がなく、検診や他の病気のため撮影されたCTで偶然発見されることがほとんどです。
大動脈瘤が大きくなり、周囲の組織を圧迫して初めて症状がでます。
そのため、大動脈瘤の部位により症状が異なります。
上行大動脈瘤―周囲に圧迫する組織がないためほとんどは無症状です。大動脈弁輪が拡大し(大動脈弁輪拡張症)、大動脈弁閉鎖不全症のため心不全を発症することがあります。
弓部大動脈瘤
- 神経圧迫―嗄声(左反回神経麻痩)、Homer症候群(交感神経圧)
- 気管圧迫―咳、呼吸困難、喀血、血痰
下行大動脈瘤―食道圧迫による嚥下困難、悪心、嘔吐
検査
胸部大動脈瘤の検査には、心臓超音波検査、胸部X線検査、造影CT検査、MRI(磁気共鳴画像)検査などがあります。
これらの検査で瘤の形態や大きさ、発生している部位などを正確に調べます。
✔︎心臓超音波検査
心臓超音波検査では大動脈弁の逆流と上行大動脈の拡大がわかります。
上行大動脈より遠位部は背側に向かうためエコー検査では検出しにくいです。
✔︎胸部X線検査
上行大動脈瘤:上行大動脈の輪郭に連続して右方に突出する陰影
弓部大動脈瘤:左第1弓が左側に突出している
下行大動脈瘤:大動脈の輪郭に連続する紡錘形あるいは円形の陰影として認め られる
✔︎造影CT検査
大動脈瘤の診断には不可欠な検査です。
他の診療科の検査で偶然発見されることがよくあります。
大動脈瘤の存在診断に加え、大きさと進展範囲、瘤壁の石灰化、壁在血栓の量や状態、瘤と周辺臓器や主要分枝との位置関係、その他の状況(炎症性大動脈瘤など)などさまざまな情報を得ることができる
紡錘状瘤の場合、瘤径は手術適応を決める重要な因子であり、一般的に胸部大動脈瘤は径55~60mm以上で手術適応となります。
弓部大動脈瘤では分枝が3本あるため大動脈瘤の位置関係が手術方針に関係します。
また、胸部下行大動脈瘤ではAdamkiewicz動脈を同定することが大切です。
✔︎Adamkiewicz動脈
下部脊髄の栄養血管である前脊髄動脈に血液を供給する肋間動脈・腰動脈の背枝の枝である大前根動脈のうち最も太い血管をAdamkiewicz動脈と呼びます。
第9肋間〜第2の肋間動脈や腰動脈から分枝する頻度が85-90%とされており、右側よりも左側から起始することが多いです。 太さは1mm程度で,前脊髄動脈と合流するところで特徴的なhairpin turnを描きます。
また,形態は個人差が大きく、血管造影でも同定できないことも少なくありません。
●大動脈基部拡張症
●弓部大動脈瘤
●胸部下行大動脈瘤 3DC
今回はこれで終わります。お疲れ様でした。
次回は治療に関して説明します。
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