循環器各論―静脈疾患
以下は今回の記事を書く際にまとめた個人的なメモです。
✔︎血管内焼灼術の適応
- 深部静脈の開存
- 伏在静脈の平均径4mm以上
- 有症状あるいはうっ滞性皮膚炎
- Terminal valveあるいは大腿部(Dodd)穿通枝に弁不全を有する
上記条件を満たす、一次性静脈瘤です。
有症状とは、下肢の重さ、だるさ、こむら返り、かゆみ、浮腫、疼痛、不快感などです。
適応静脈はGSV(添付文書)、SSV(添付文書)、副伏在静脈(ガイドライン上)です。
Giacomini静脈、頭側への延長したSSV、皮下組織内の静脈、不全穿通枝、治療後の伏在筋膜下残存瘤、静脈奇形は適応外です。
✔︎弁不全の診断
基本的に弁不全のない部分は焼灼せずに温存する
逆流時間を測定する。3-5cmおきにミルキングし検索する。
- 表在静脈―0.5秒以上
- 深部静脈―1.0秒以上
✔︎不全穿通枝の診断
穿通枝の弁不全は、ミルキング負荷で圧迫時・解放時に0.5秒以上の深部から表在への血流を認めた場合に診断する。
ずべての不全穿通枝に病的意義はなく、SVS/AVFガイドラインでは「潰瘍直下に存在し、逆流時間が0.5秒以上、直径3.5mm以上」と定義している。
✔︎下肢エコーで静脈径測定部位
- GSVーterminal valveより3cm遠位部、大腿中央、膝、下腿中央の4箇所
- 副伏在静脈―SFJより3cm遠位、大腿中央の2箇所
- SSV― SPJより3cm遠位部、腓腹部中央の2箇所
正常GSV径3-7mm、SSV径2-4mm(皮膚の皺より2-4cm高位)
✔︎術後下肢エコー検査時期
- 静脈血栓塞栓症の評価のために術後10日以内―SFJ/SPJの3cmまでの開存は許容
- 治療効果判定のため術後1−6ヶ月―5cmを超える開存部分に血流がある場合を再疎通とする。
✔︎術後合併症・神経障害
焼却時あるいは瘤切除・小切開アプローチ時に約10%以下で起こる。
- 伏在神経ーGSVが下腿遠位部で並走する。下腿GSVの焼灼はできるだけ避ける。
- 脛骨神経ー膝窩部SPJ周辺でSSVの近傍を走行する。SSVが腓骨神経と交差する部位より戦争の筋膜上から焼灼を開始する。
- 坐骨神経・総腓骨神経ーSPJが膝窩部の皮膚の皺2-4cm高位であり、これより高位から焼灼すると起こる。
- 腓腹神経ーSSVと遠位部で並走する。SSV遠位部の焼灼を避ける。
✔︎Endovenous heat-induced thrombosis (EHIT)
血管内焼灼術後に焼灼端から深部静脈内に血栓が進展すること。
この血栓をKabnickらはEHITとしてClass1-4に分類した。
EHITの頻度は約1.4%です。
本邦での発生頻度の治療方針
- Class2 1.0%―経過観察
- Class3 0.11%―抗凝固療法
- Class4 0.013%―DVTに準じて治療
EHITはDVT・PEに発展することは稀であるため、術後エコーで検索する必要性は少ないという意見もある。
✔︎血管内レーザー焼灼術の焼灼条件
レーザーのエネルギーはレーザの出力×照射時間で計算される。
単位長あたりのエネルギー密度LEED(J/cm、照射エネルギー密度)を用いる。
適切な焼灼条件はLEED60-80J/cm
レーザー出力は通常光ファイバーで8-12W、細径タイプで6-7Wが適切な出力
✔︎高周波焼灼術の焼灼条件
カテーテルの先端に発熱部を持ち、発熱部が静脈壁と接触し、発熱部からの熱伝導によって静脈が焼灼される。超音波プローブで体外から圧迫して静脈壁と発熱部を密着させる。
加熱部温度が120℃になるように自動調整される。
発熱部が7cmのカテーテルで出力パターンは最大出力40W(18W)で6秒間、最大出力25W(11W)で14秒の計20秒である。
焼却の目安は「10秒・20W(10W)以下」
※()内は発熱部が3cmのカテーテル
●焼灼サイクル
基本的に一箇所2回までで、最大3回までです。
それ以上は皮膚熱傷、動静脈瘻、神経障害などの合併症の危険があります。
全体の焼灼サイクルは
- GSV―焼灼開始位置が2回、残りは1回ずつ。膝下は行わないかTLA追加し1回
- SSV―焼灼開始位置が2回、残りは1回ずつ。あるいはすべて1回ずつ。
不十分な焼灼部、不全穿通枝、瘤状変化部は2回行う。
※イラスト・図はURLがない場合は「下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術のガイドライン2019」からの引用です。
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