その他―免疫
- 免疫細胞とは
- 骨髄系細胞の主な免疫細胞とその役割
- 顆粒球
- 単球
- リンパ系細胞の主な免疫細胞とその役割
- B細胞
- 免疫グロブリンとは
- 免疫グロブリンの役割
- 免疫グロブリンの種類
今回は免疫細胞に関して説明します。
免疫細胞とは
免疫細胞とは免疫系の構成因子の一つです。
また、免疫細胞は主に骨髄に存在する「造血幹細胞」から増殖・分化して、骨髄系前駆細胞から赤血球や血小板と共に「白血球」として作られる顆粒球とリンパ系前駆細胞から作られるリンパ球があります。
- 骨髄系前駆細胞から分化ー顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞)、単球(マクロファージ、樹状細胞)
- リンパ系前駆細胞から分化―リンパ球(B細胞、T細胞、NH細胞)
※APC:抗原提示細胞のことであり、取り込んだ物質の一部をT細胞に提示します。
骨髄系細胞の主な免疫細胞とその役割
骨髄系細胞の主な免疫細胞は以下の細胞になります。
- 顆粒球―好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞
- 単球―マクロファージ、樹状細胞
顆粒球
顆粒球は好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞で構成される不均一な白血球のカテゴリーです。これらは自然免疫細胞であり、活性化されると、免疫促進分子を放出してウイルスや寄生虫の感染を撃退します。
- 好中球―白血球の50%以上を占める病原体を貪食する殺菌性顆粒球です。好中球はサイトカインを産生して他の免疫細胞を炎症部位へ動員することで免疫を調節します。
- 好酸球―寄生虫感染症やI型アレルギー性疾患(遅発型)に対する宿主反応を起こします。
- 好塩基球―抗原の結合でヒスタミンなどのケミカルメディエーターを放出し、I型アレルギーに関与します。また、炎症反応や寄生虫などの感染防御にも関わりますが不明なことも多いです、
上記血球は血液内に存在していますが、肥満細胞はマスト細胞ともいい、組織の中に存在します。
- 肥満細胞―好塩基球と同じような働きをし、抗原の結合でヒスタミンなどのケミカルメディエーターを放出することでI型アレルギー反応やアナフィラキシー反応に関連しています。特に寄生虫や毒などの環境毒素に対する免疫において、保護的役割を果たすことも明らかにされています。
単球
単球は血管内から組織内に移行することでマクロファージや樹状細胞に分化します。
✔︎マクロファージ
マクロファージーは好中球と同様に貪食能(病原体を貪食して殺菌すること)を持っていますが、寿長は長く、老廃物の処理や好中球が貪食できない微生物などに対する防御を行います。また、異物情報をリンパ系細胞に伝える役割(抗原提示、サイトカイン)もあります。
✔︎サイトカインとは
サイト(=細胞)が作る、カイン(作用する物質)
つまり、刺激を受けた細胞が違う細胞にその刺激を伝えるために作る、作用物質のことです。
炎症の発生に関わるサイトカインのことを「炎症系サイトカイン」あるいは「ケモカイン」ともいいます。
伝える情報によって、作用する細胞も反応も異なります。
例えば、マクロファージはINR-γにより活性化されます。
マクロファージの中にはもともと生体の組織内に分布・定着している(組織内マクロファージ)ものもあり、各組織に応じた機能を発揮して特有の名称で呼ばれます。
- ミクログリア ー脳・中枢神経に存在
- 肺胞マクロファージ ー肺に存在
- 破骨細胞 ―骨に存在
- クッパー細胞 ―肝臓に存在
- 赤脾臓マクロファージー脾臓に存在
- 腹腔マクロファージ ー腹腔内に存在
✔︎樹状細胞
ウイルスや細菌などの抗原情報をリンパ球(T細胞・B細胞)に伝える、強力な抗原提示能を持つ細胞であり、全身の組織に広く分布しています。
情報を受け取った(抗原提示された)リンパ球は抗原(ウイルスや細菌など)を攻撃します。
マクロファージも抗原提示細胞ですが、T細胞を活性化させる能力はマクロファージより強いと言われています。
皮膚に存在するものはランゲルハンス細胞と呼ばれます。
自然免疫で処理しきれなかった病原体に対する第二次防衛として働く、より強力な獲得免疫の最初の司令塔です。
リンパ系細胞の主な免疫細胞とその役割
リンパ系細胞の主な免疫細胞は以下の細胞になります。
- B細胞―抗体を産生し、液性免疫の中心となります。
- T細胞―ヘルパーT細胞(Th1、Th2)、細胞障害性T細胞など直接細胞を破壊する細胞性免疫の中心となります。
- NK細胞ー免疫のスイッチ(抗原提示)を必要とせずに常に異常細胞を破壊する機能がある自然免疫の一種です。
B細胞
B 細胞(B cell)は特異的抗原に対する抗体の産生および放出を担い、抗体を介した免疫応答である、体液性免疫の中心となる細胞です。
B 細胞は骨髄の造血幹細胞(hematopoietic stem cell)に由来し、骨髄で分化・成熟します。
特異的抗原による活性化を経て形質細胞(plasma cell)か記憶細胞(memory cell)のいずれかに分化します。
- 形質細胞:液性免疫系の中心となる細胞です。特定の抗原によって活性化した B 細胞は、その抗原に対して親和性を有する抗体(主に IgG または IgA)を産生する専門の細胞、形質細胞へと分化します。
- 記憶細胞:活性化した B 細胞の一部が分化する細胞で、その名の通り抗原を記憶し、病原体などに由来する抗原が再び出現した際に、免疫系がすばやく対応することを可能とします。なお抗体を産生する形質細胞は、その寿命が数週間と短いため、このような作用を担うことはできません。
免疫グロブリンとは
B細胞が産生する抗体のことを免疫グロブリンといいます。
抗体は血液・リンパ液・組織液・分泌液などによって体内に分布し、抗原と結合(抗原抗体反応)することで主に4つの作用があります。
- 中和作用―感染力や毒性を失わせる働きがあります。
- オプソニン化―食細胞(マクロファージ・好中球)が貪食しやすくします。
- 補体の活性化―古典経路で補体の活性を誘導します。
- 病原体の排除―NK細胞を誘導し病原体を排除します。
免疫グロブリンの役割
✔︎中和作用
抗体は、侵入してきた異物(抗原)と結合して周囲を取り囲み、毒となる部分を隠して動けなくします。毒素に特異的な抗体が結合すると、その毒素は標的細胞に結合できなくなり、毒性を発揮できなくなります。そして、細菌が作り出す毒素を無毒化します。このような働きを持つ免疫グロブリンを中和抗体と言います。特にIgAが最も関与しています。
✔︎オプソニン化
抗体が抗原に結合(抗原抗体反応)すると、食細胞(マクロファージ・好中球)が貪食しやすい状態になります。貪食を助ける物質をオプソニンといい、その作用をオプソニン化といいます。特にIgGが最も関与しています。
✔︎補体の活性化
補体はC1〜C9と名付けられた9つのタンパク質からなり、C1からC9までの全ての補体が抗原とくっついた抗体に統合して、細菌の細胞膜を破壊する「膜侵襲複合体(MAC)」(C5b-C9)が形成され、細菌の細胞膜に穴を開けて、殺傷してくれます。特にIgMが最も関与しています。
MACは抗原抗体反応が関与するII型アレルギー・III型アレルギーに関与し細胞障害にも関わります。
補体の活性経路には三種類あります。
- 古典経路―抗原抗体反応によりC1から順番に活性化されます。
- 副経路―細胞の膜成分などによりC3以降が活性化されます。
- レクチン経路―微生物のとレクチンが結合しC4以降が活性化されます。
また、補体にもオプソニン化の作用もあります。
✔︎病原体の排除-抗体依存性細胞障害活性(ADCC)
ウイルスに感染した細胞は、その細胞の表面にウイルス特異抗原を現しています。このウイルス特異抗原に抗体が結合すると、この抗体を目印にNK細胞などが結合し、活性酸素やタンパク分解酵素を出して感染細胞を傷害します。この働きは抗体依存性細胞傷害活性(Antibody Dependent Cell-mediated Cytotoxity:ADCC)と呼ばれています。
免疫グロブリンの種類
免投グロブリンは.2本の長いH(heavy)鎖と2本の短いL(light)鎖から構成されるY字型の構造をしています。全体はざらに抗原の結合部位となるFabと、免疫細胞などと結合するFcに分けられます。
免疫グロブリンには、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5つの種類があります。
✔︎IgG
正常人の免疫グロブリンの80%を占め、病原体(細菌やウイルス)を防御する役目を担っています。また、胎盤を通過して胎児に移行する(胎盤移行性)ため、生まれてから数ヶ月の間、赤ちゃんの身体を守る働きもします。
✔︎IgA
血清IgAと分泌型IgAの2つがあります。
分泌型IgAは外分泌液中(喉の表面、腸の内側、気管支の内側の壁など)の粘膜の表面や、分娩後に数日間分泌される「初乳」に存在しています。
✔︎IgM
正常人の免疫グロブリンの10%を占め、抗原結合部が多いため、IgGと比べて赤血球凝集能、細菌凝集能、溶血能、殺菌能なども高いです。病原体(細菌やウイルス)に感染した時(抗原刺激)にIgGより早い時期(3日前後)から出現しますが、短期間で下降していきます。
✔︎IgD
末梢血中のリンパ球の膜表面に存在し、正確な機能についてはよくわかっていません。
✔︎IgE
気道、消化管粘膜、リンパ節などの局所でつくられ、Ⅰ型アレルギー反応(即時型アレルギー反応)を起こす抗体であり、レアギン抗体とも呼ばれます。
組織中の肥満細胞や末梢血中の好塩基球のIgE受容体と結合し、細胞表面上でアレルゲン(抗原)と反応してヒスタミンなどの化学伝達物質を放出し、Ⅰ型アレルギー反応を起こします。
また、アレルギー性疾患や寄生虫感染症など、アレルギー反応が関係した疾患にかかるとIgE値が増加します。
今回はこれで終わりです。お疲れ様でした。
次回はT細胞について説明します。
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