その他―免疫
- 免疫とは
- 免疫系の構成因子
- 免疫細胞の分化
- 免疫力とは
- 自然免疫と獲得免疫
- 自然免疫とは
- 第一段階ー体表面の自然免疫(バリアー)
- 第二段階ー体組織内の自然免疫
- 獲得免疫とは
- 液性免疫とは
- 液性免疫の反応段階
- 細胞性免疫
- 細胞性免疫の反応段階
- ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の働き
今回は免疫に関して説明します。
免疫とは
免疫とは人体にとっての異物を「非自己」と判断して排除するシステムです。
つまり、「病原体・ウイルス・細菌などの異物を体に入り込んだ時に見つけだして、体から取り除くという仕組みのこと」です
免疫系の構成因子
免疫を司るシステム(免疫系)には、脳や心臓のように中心となる臓器が存在せず、免疫系の構成因子「免疫細胞(白血球)」とリンパ器官をはじめとする様々な器官組織から成る。
免疫細胞の分化
免疫細胞は主に骨髄に存在する「造血幹細胞」から増殖・分化して、赤血球や血小板と共に「白血球」として作られます。
そして、リンパ器官は免疫細胞が活性化している組織です。
- 免疫細胞は骨髄で分化した前駆細胞(骨髄系の前段階の細胞)から分化します。
- 免疫に関わる物質は骨髄で分化したリンパ系の前段階の細胞である前駆細胞がリンパ系細胞に分化し,そのリンパ系細胞から生成された物質です。
具体的に骨髄系細胞とリンパ系細胞は以下のような細胞があります。
- 骨髄系前駆細胞から分化ー顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞)、単球(マクロファージ、樹状細胞)
- リンパ系前駆細胞から分化―リンパ球(B細胞、T細胞、NH細胞)
リンパ器官である胸腺と骨髄はただ免疫反応が活発なだけでなく、リンパ細胞の成熟に関わります。
- 胸腺で成熟―T細胞
- 骨髄で成熟―B細胞
免疫力とは
生体は3つの防御壁によって細菌やウイルスなどの異物(病原体)から守っています。
(1)の物理的な防御を自然免疫の第一段階とします。
免疫細胞は「白血球」として作られ、顆粒球・リンパ球・単球が含まれます。
そのため、免疫力は白血球が担っています。
自然免疫と獲得免疫
免疫には顆粒球を中心とした自然免疫とリンパ球を中心とした獲得免疫があります。
- 自然免疫―人に生まれつき備わっている免疫反応です。ウイルスや細菌などの病原体が体に侵入すると速やかに反応し駆逐する免疫システムです。
- 獲得免疫―後天的に獲得される免疫反応です。一度抗原に出会うことで抗体を作り、その作り方を記憶し、再度同じ抗原が侵入してきた時に速やかに抗体を産生し排除する免疫システムです。
自然免疫とは
自然免疫は生物が生まれながら持っている感染防御システム(免疫機構)であり、細菌やウイルスなどの病原体の侵入の際に即時的・直接的に起こる人食い的な生体防御反応である。
獲得免疫と違って異物(病原体)の種類を選ばないため反応が素早く、多くの病原体に対応できる免疫システムです。
感染初期の抵抗性、ガンや生活習慣病の予防、傷の修復などは特定の病原体だけに反応する獲得免疫よりも有効です。
自然免疫には二段階あります。
第一段階―体表面の自然免疫(バリアー)
外界と接する皮膚や粘膜、そこに存在する常在菌は侵入を未然に防ぎます。
また、消化器・呼吸器・尿路系などを覆う粘膜は物理的バリアーが弱いため胃液・消化酵素などの殺菌作用・蠕動運動・粘液や分泌液などで洗い流しています。
第二段階―体組織内の自然免疫
第一段階を突破し、体組織内に細菌やウイルスなどの病原体が侵入すると免疫応答により炎症が惹起されることを自然免疫の第二段階といいます。
細菌とウイルスに対する反応が異なります。
- 細菌ー顆粒球(好中球)やマクロファージなどの貪食能を有する食細胞が補体の助けを借りて炎症を促進し貪食殺菌を行います。
- ウイルスーNK細胞によるウイルスに感染した細胞を直接細胞ごと破壊します。
ウイルス感染初期にはNK細胞による非特異的防御(特に特定せずに不特定多数の細胞に対して作用します)を行います。
つまり、正常細胞には身分証明としてMHCクラスIが表出していますが、感染した細胞には表出していないため、MHCクラスIが表出していない細胞をくまなく破壊します。
獲得免疫とは
自然免疫で処理しきれなかった時に第二次防衛としてより強力な獲得免疫が働き病原菌の排除を行います。
感染した病原体を特異的に見分け、それを記憶し、 同じ病原体が再び侵入してきた時に効果的に病原体を排除する仕組みで、適応免疫とも呼ばれます。
自然免疫と比べると、初めて侵入してきた異物に対して有効性を発揮するまでにかかる時間が長く、数日かかります。
獲得免疫の特徴は以下の4つです。
- 特異性
- 多様性
- 自己寛容
- 免疫記憶
病原体は無数に存在し、全てに対してそれぞれに特異的に反応します。→①特異性
また、どんな病原体や異物にも反応できる多様性もあります。→②多様性
しかし、自己と異物を見分ける仕組みがあり、自己に対しては攻撃しません。→③自己寛容
そして、一度感染した病原体を記憶し、再び同じ病原体が侵入してきた際に、感染・発症を防ぎ、あるいは発症しても軽度で済むように迅速に免疫が機能します。→④免疫記憶
獲得免疫には液性免疫と細胞性免疫があります。
- 液性免疫―樹状細胞によって活性化されたヘルパーT細胞(Th2細胞)がB細胞を活性化させて抗体が産生されます。抗体は細胞ではなく体液に溶けているため液性免疫といいます。
- 細胞性免疫―貪食と細胞傷害の二種類あります。ヘルパーT細胞(Th1細胞)がマクロファージを活性させて貪食作用を促進すること。また、Th1細胞がキラーT細胞を活性化し病原体に感染した細胞を殺すこと。いずれにしろ、細胞が直接働くため細胞性免疫といいます。
液性免疫とは
自然免疫を乗り越えた病原体(抗原)を補体や免疫グロブリン(抗体)によって発症を防ぐ免疫システムのことです。
病原体一つ一つ個別に反応する免疫グロブリン(抗体)をB細胞が作ります。
この時、病原体を抗原と言い、免疫グロブリンを抗体と言います。
液性免疫の反応段階
細菌やウイルスなどの病原体(抗原)が体内に侵入
↓
貪食細胞(マクロファージ、樹状細胞)が病原体(抗原)を飲み込んで病原体(抗原)の一部(タンパク質の断片)を細胞表面に目印として掲げます。(抗原提示)
↓
ヘルパーT細胞(リンパ球、Th2細胞)がとらえ、B細胞に、この病原体(抗原)に対する抗体(免疫グロブリン)を作らせます。
↓
B細胞は、形質細胞〔けいしつさいぼう〕と呼ばれる抗体産生細胞に変化し、抗体を作り始めます。(液性免疫)
↓
しかし、最初の感染による刺激でできる形質細胞は数が少なくて、産生される抗体も量的に多くない。そのため、B細胞の一部は免疫記憶細胞(メモリー細胞)として体内に長く留まります。
↓
2回目に同じ病原体(抗原)が侵入してきた時、この免疫記憶細胞が刺激され、速やかに形質細胞に変わり、その病原体だけを特異的に攻撃する抗体を大量に産生して、感染(発症)の防御します。
1度目の免疫反応で抗原を記憶したメモリーB細胞が2度目の細菌・ウイルスの侵入の時に素早く反応するためです。
この反応を典型的に用いているのがワクチン療法です
細胞性免疫
細胞性免疫は液性免疫のような体液中の抗体を産生するのではなく、免疫細胞自体が異物を攻撃するため細胞性免疫と言います。
免疫細胞が直接攻撃するとは「病原体が感染した細胞を破壊し、その破壊された細胞を貪食(吸収し消化する)すること」です。
細胞性免疫の主要な細胞の種類は、リンパ球と貪食細胞があります。
- リンパ球―細胞障害性T細胞(キラーT細胞)とナチュラルキラー細胞(NKキラー細胞)
- 貪食細胞―マクロファージ、好中球
細胞性免疫の反応段階
細菌やウイルスなどの病原体(抗原)が体内に侵入
↓
貪食細胞(マクロファージ、樹状細胞)が病原体(抗原)を飲み込んで病原体(抗原)の一部(タンパク質の断片)を細胞表面に目印として掲げます。(抗原提示)
↓
ヘルパーT細胞(リンパ球、Th1細胞)がとらえ、サイトカインを産生し、マクロファージとキラーT細胞・制御性T細胞を活性化します。
↓
キラーT細胞:感染した細胞を直接攻撃・排除します。
マクロファージ:抗原提示とともに、抗原を直接貪食します。
制御性T細胞:キラーT細胞が正常な細胞まで攻撃しないように制御したり、免疫反応を終了させる免疫細胞です。
NKキラー細胞:がん細胞や病原体を直接破壊するため細胞性免疫とも呼ばれますが、他の免疫細胞からの指令なし病原体を破壊する生まれ付き備わった免疫システムであるため自然免疫の一種でもあります。
↓
ヘルパーT細胞とキラーT細胞の一部が免疫記憶細胞となり、抗原に対する細胞傷害活性を持ったまま体内に残ります。
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の働き
NK細胞は1970年代中頃になって同定されたリンパ球であり、キラー細胞の一種でリンパ球の約10〜30%を占める免疫細胞です。常に体内をパトロールしており、細菌やウイルスなどの病原体やがん細胞を発見すると、他の免疫細胞の指令(サイトカイン)なしに極めて強い殺傷能力でいち早く攻撃を始めます。
また、生まれつき備わっているため自然免疫の一種でもあり、抗体を介さずに免疫細胞そのものが細菌やウイルスなどの病原体やがん細胞を直接攻撃するため細胞性免疫とも分類されます。
正常な細胞は、細胞の表面に免疫細胞と結合することができるタンパク質であるMHC(Major Histocompatibility Complex、主要組織適合性複合体)Class Iをもっています。
NK細胞はMHC Class Iに特異的な抑制性受容体を発現しており、正常な細胞のMHC Class Iと結合すると活性が抑制されます。
がん細胞や感染細胞などの異常な細胞は細胞表面のMHC class Iが減少または欠乏しているため、活性が抑制されないため、攻撃して除去することができます。
つまり、正常細胞に対しては活性が抑制され、異常細胞に対しては活性化されます。
活性化したNK細胞は様々な顆粒物質(細胞傷害因子であるパーフォリン、グランザイム)を合成し、細胞の外に分泌して異常な細胞を破壊します。
- パーフォリンー標的細胞の細胞膜に孔を開けるタンパク
- グランザイムー標的細胞に細胞死を誘導する一群のセリンプロテアーゼ
キラーT細胞の細胞障害機序も同様の機序です。
今回はこれで終わりです。お疲れ様でした。
次回はそれぞれの免疫細胞の役割の説明をします。
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