循環器各論―静脈疾患
下肢静脈疾患
- 下肢静脈瘤
- 深部静脈血栓症
- 静脈炎
今回は下肢静脈瘤の保存的加療に関して説明します。
- 下肢静脈瘤とは
- 分類
- 症状
- 原因
- 検査
- 手術適応
- 治療
保存的加療
手術以外の治療法を保存的治療と呼びます。
下肢静脈瘤の症状の緩和・軽症例の進行を予防するための姑息的加療です。根治的治療ではないため完治することはありません。
- 生活習慣を改善
- 圧迫療法
- 薬物療法
1.生活習慣の改善
長時間の立っていると、下肢の静脈圧が上昇するため、症状が強くなり病気が進行しやすくなります。
そのため、できるだけ歩き回ったり、1時間に一回は休憩取るようにしてください。また、足のマッサージや就寝時に足枕をして心臓に血液を戻りやすくします。
また、減量し、BMIを25以下にすることや骨格筋ポンプの作用を強くするために足の筋トレも使用です。特につま先を上げてふくらはぎの筋トレは一番有効です。
2. 圧迫療法
弾性包帯や弾性ストッキングを用いて下肢を圧迫する方法は下肢静脈瘤、深部静脈血栓症、リンパ浮腫に対する保存的治療として最も重要な治療法です。
弾性包帯や弾性ストッキングを着用することで骨格筋ポンプ作用を補助します。静脈瘤の痛み、だるさなどの自覚症状および浮腫や皮膚炎などの他覚症状を改善し、生活の質を高めるために使用します。
✔︎弾性包帯
圧迫療法に用いる伸縮性の包帯である。圧迫力・圧迫範囲を調整しやすいですが、ずれやすく・ほどけやすく、巻き方による圧迫力の差が出やすいです。
- 大伏在型静脈瘤ー 6 インチ幅で大腿まで巻きます
- 小伏在型静脈瘤ー4インチ幅で膝まで巻きます
足関節での圧力は静脈瘤術後は20mmHg未満、治療前の静脈瘤は30-40mmHg、リンパ浮腫には40-50mmHgで巻きます。
✔︎弾性ストッキング
長さによってハイソックス、ストッキング、パンティーストッキングなどの種類があります。
コンビニエンスストアやドラッグストアなどで、むくみ予防用に売られている市販の着圧ストッキングと医療機関で処方される医療用の弾性ストッキングがあり、基本的には構造は同じです。
血管内治療後は弾性ストッキングによる圧迫療法(20-30mmHg)を術後1-4週間継続することが薦められています。
3.薬剤治療
飲み薬で静脈瘤を根本的に治す薬はありません。しかし、痛み、だるさ、むくみ、こむら返りなどの症状を抑える薬はあります。副作用の少ない漢方薬や、かゆみ、乾燥などを防ぐ軟膏、ローションを補助的に用いることがあります。
さまざまな漢方が使用されますが、下記などがよく使用されます。
- むくみー五苓散(ごれいさん)
- こむら返りー芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
- 倦怠感―桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
また、足のむくみを主訴に来院され下肢エコーで静脈弁不全が認められず、静脈瘤の診断に至らない場合はその他の原因を検索します。
まずは採血・心エコーで心不全・腎不全・甲状腺機能低下症を鑑別します。
診断に至ればその治療を開始します。
慢性静脈不全症とは
慢性静脈不全症とは慢性的に静脈の機能不全のため足に静脈血が貯まる状態をいいます。つまり、下肢静脈高血圧が継続している状態です。
- 静脈逆流―一次性静脈瘤のことです。
- 静脈閉塞―深部静脈血栓症により、深部静脈が閉塞することで穿通枝の弁不全が起き、表在静脈に血液が流れることです。つまり、二次性静脈瘤のことです。深部静脈血栓が溶解後も穿通枝の弁不全のため、症状は継続します。このことを深部静脈血栓症後遺症といいます。
- 特発性(原因不明)―明らかな下肢静脈疾患がなく、静脈うっ滞性潰瘍となることです。高齢、肥満、廃用症候群など無動、骨格筋ポンプ不全などの関与が考えられます。
✔︎治療
- 一次性静脈瘤―外科的加療・保存的加療を選択
- 深部静脈血栓症―血栓溶解療法(ヘパリンやDOACなどの抗凝固療法)
- 深部静脈血栓症後遺症―不全穿通枝として、外科的加療・保存的加療を選択
- 特発性―外科的加療の適応はないため、保存的加療のみの適応
今回はこれで終わります。お疲れ様でした。
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